記憶

記憶
家に帰ってからも彼女の悲しい笑みが脳裏をよぎる。僕の頭の中は彼女のことでいっぱいだった。 次の日も病院を訪れたが彼女はいなかった。僕は彼女について思い出さなくてはいけないという焦燥に駆られていた。 彼女と同じ病室にいた人などに聞いてまわり、彼女の名前を知ることができた。また、彼女は僕があった日よりも前に亡くなっているという。 僕が触れることのできた彼女は幻影だったとでもいうのだろうか。または神様のいたずらで、生前の彼女と接することができたのだろうか。 そんな疑問だらけの頭の中でひとつだけ断言できることがあった。 “僕は彼女を知っている” 彼女の名前には聞き覚えがあった。とはいえ随分昔のことだ。
雨森
下書きに使ってます