素敵
素敵
素敵
自分にはほど遠く考えたこともなかった。
こんな言葉はありふれていて、よく目にするけど、実際の会話で直接「素敵」だと言うとこも言われることもあまりなかったからだ。「ひさ」の口癖だったそれはあまりに綺麗でまっすぐだった。言葉を選んでしゃべっているのか、わからない。でもそれが僕の中で大きく響き、大切な言葉へと変わっていった。
勉強ができ、スポーツができ、モテる。優等生として大学まで進学をし、大企業へと就職をした。当時3年間付き合っていた彼女もいた。これがゲームなら、ステータスはそこそこいいのではないか。そんな日常を送っていた。
それも社会人になるまでだった。自分に余裕がなくなったのだろうか。会社では上司の機嫌とり。家では彼女の機嫌とり。いつだって、自分には、ここしかない。この生活しかない。仕事が忙しいのは当たり前。年下の彼女がわがままなのは当たり前。毎日家と会社で今思えば、現実から目を背けないと限界が来るってどこかでわかっていたのかもしれない。全部を肯定することで身を守っていたのかもしれない。2年目の夏に実感したことのない、心が折れる音がし、泣いていた。
限界だ
ある日突然急に目の前が真っ暗になった。シュレッダーの前で立ち尽くし、操作がわからなくなった。ポケモンの主人公にでもなったのだろうか。気づけば僕は病院にいた。
そこで鬱病と診断をうけた。まさか自分がと思う反面、腑にも落ちた。
そこからは、勤めた会社をやめ、一人暮らしをやめ、当時付き合っていた彼女と別れ、実家にかえった。
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カテゴリー: 恋愛・青春
投稿日時: 2024/9/4 21:17
最終編集日時: 2024/9/5 22:00
tacrowmal