空の魚

私は死にました。  死んだと思った理由は、空に魚が見えたからです。  無数の小さな魚がキラキラと青の中で瞬いて、わたしの目の前を去って行きました。  昔夢の中で見た光景と似ていたのでふと口角が上がり、なんだか満ち足りた気持ちにもなって死ぬことも悪くはないと思えたのです。  さようなら、空に鳥が飛んでいた世界。 こんにちは、魚が空に泳いでる世界。 
篠俣 由子
篠俣 由子
頭の片隅にあるもの