君の声が届くまで

第一章:沈黙の旋律 高校二年の春、咲良(さくら)は事故で声を失った。医師は「機能的には問題ない」と言ったが、彼女の声帯は沈黙を選び続けた。言葉を失った世界は、色を失ったように感じられた。 そんなある日、学校の音楽室から聞こえてきたピアノの音に、咲良は足を止める。そこにいたのは、三年生の奏人(かなと)。彼はかつて音楽コンクールで注目された天才だったが、今は誰にも聴かせることなく、ひとりで弾いていた。 「……君、聴いてたの?」 奏人は驚いたように言ったが、咲良はただ頷いた。声は出ない。でも、心は動いた。
夜の祝福あれ☾·̩͙⋆
夜の祝福あれ☾·̩͙⋆
絵を描いたり、小説を書いたりするのが趣味な高校生。夜行性なので、夜に書くことが多いです。 現在は、「書く習慣」にも生息してます。名前も同じなので良かったら探してみて下さい