「第6回N1」 水面に映るすべて

私が彼、柚月と出会ってからしばらくの間、 私は彼のことを女の子だと思っていたし、柚月は柚月で私のことを男の子だと思っていたらしい。 当時、私は異常に女々しかったから、かなりショックを受けた。 美容室に駆け込んで、泣きながら美容師さんに「女の子らしくして」って頼み込んだことを、今でも覚えている。 だから、あれからずっと髪を伸ばし続けてきた。 ずっと大切にしてきた。 そうしないと柚月に好かれないような気がしてたから。 そんな私の黒髪が、少しずつ切れてはらはらと、公衆トイレの洋式便所に沈んでいく。 私の五年が水の泡になる。 思い返せば、自力で髪を切るのは初めてかもしれない。
有陽 へいか
有陽 へいか
こんにちは 有陽(ありひ)と読みます 高ニです 絵が好きです