ビブリアの陽のもとに

ビブリアの陽のもとに
我が物顔で大地に居座る落ち葉を、これまた我が物顔で踏み付けて道を行く。進む風と歩を合わせるようにゆっくりと。それでも調子を崩さないために自嘲を保つ。 忘れ去られた星国。永遠を約束されたように勝利の笑みを浮かべる文明の影が、痛々しい程に自然に殺されている。 “ビブリア”の西南区。誇りのまま消えていった帝国の跡地。 アンクル・サンフォードは答えた。 「矜恃は力を与えるが、それを行使する為の英智を奪う。結局、最後まで生き残ったのは臆病な老犬ばかりだった」 私のようになと一言付け加える彼の後ろ姿は、少なからず亡国の誇り高き戦士のようには見えない。腰は曲がり、屈強な筋肉達は呆れたように彼の元を離れていった。 炯々とした瞳だけが、あの時の名残として場を仕切っている。 どんな生命も時には勝てない。厳格な獅子だろうとそれは変わらなかった。誰であろうと平等な死に抗おうとする。成功した試しがないのに、変わることのない一つの事実としてそこにある。 「やはり生命はいないか。鯨も、鹿も、蟻ですら。みんな北東の方へ逃げてしまった。元よりぼんくらな人間しか興味を示さない土地ではあったが、それにしても殺伐とし過ぎている」 木々が揺れ、行き場のない悲しみが乱れているのを感じていた。植物がまだ存在しているという事実は何の例証にもならない。自我があり、それに見合った機能が身体にあれば、彼らもここにはいなかった。ここで根を張り巡らせてしまったという原罪が、呪いのように立ち尽くしている。
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