墨と猫

墨と猫
第3章 針の先の棘 数日後、彩花はまたスタジオにいた。放課後の常連になりつつある自分に、内心ドキドキしながら。凛さんは今日も作業台で新しいデザインを彫っていた。黒のタンクトップが汗で少し張り付き、首筋のラインが妖しく光る。彩花は視線を逸らそうとするのに、つい盗み見てしまう。 「お花ちゃん、今日もスケッチ持ってきた? それとも、私の顔見に来ただけ?」 凛さんが針を置いて振り向き、唇を湿らせるように舌をチラリと出す。彩花の頬が熱くなった。彼女は慌ててスケッチブックを差し出し、声を上ずらせる。 「ち、違うよ! これ、クロの新しいデザイン…凛さんに似せたやつ、もっと大人っぽくしてみたんだけど…」
くろねこ
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主に百合小説を書きます 甘酸っぱいひと時の青春