後書き「仮」

後書き「仮」
【仮】  私は周りの人を気持ち悪く感じて自分さえも卑下している故に、人というモノを書こうとすると手が震えて気が狂いそうになる。私の抱える人に対する恐怖、獰悪と思い込むその心理は心奥底に隠されていることであろう。それらは文字として書き起こされ、文の裏側に滲み出ていたり普段の口調でよくわかるものだ。  然し、畜生めが人様に手紙なんぞを贈る差し出がましい生物が此の私である。鴨嘴や面梟と鬣蜥蜴の混血とまで言われてきた私は愚かなことに筆を持ち紙に七五調の詩を書き詰めて季節の過ぎる風に乗せて友人に贈っている。返事が返ってきたことはないが、微笑みは返ってきた。大抵、真夏かクリスマス・イブに顔を合わせている。彼女も不可思議な女だ。向日葵の字が入った可愛らしい子で硝子玉みたいな眼をいつもキラキラとさせている。私、自然界における肥満の権化にとっては堪らないくらい痩せ細った身をせっせこせと動かして歩いているのだ。まるで初めて南極のペンギンを見た男のように私はひっくり返ってしまう。彼女は昔から寓話や動物、主に鳥や騏驎を描いていた。当時は私の影響だろうと推測していたが違うのかもしれない。イソップ寓話を読んで感激したのかもしれないな、と最近ではよく思う。私も「青豹」という寓話を書いているが社会を動物に喩えて書くのは至難の業だ。そして困難より先には眼も眩むほどの美しさ、絢爛さが溢れかえっていて度々私の書く世界に呑み込まれてしまう。此処が何処だか分からぬと云った調子である。こうして何万文字と修正しては撫でて読み返してきた物語は此処で、そして此を読んだ数人の心に溶け込んで泡となり消え失せることであろう。完成したとき此処にある小説は全て消してしまう。悲しいが、私の心を覗き込んだ人々が日本や世界に一人でも紛れ込んでると思えば素敵だ。  動物達は今日も、一冊の本を横眼に店を通り過ぎてゆく。  (追加)  私には恋人が一人も出来ませんでした。だからセックスやキスの味が一切分からないのです。恋の甘い味を教えてください。女の子のお尻の柔らかさとか、胸のふっくらとした輪郭の揺れる様がよくわからないのです。慈悲をください。死ぬ前にお乳を恵んでくださいまし。私は牛乳が好きなので、きっと嬉しいはずです。そして叶うことなら一つ頬にキスをしてください。それで十分です。それでも矢張り、胸を揉みたいと思います。死ぬ前には胸に挟まれ、夢見心地のまま死にたいと思います。ああ、その汗ばんだ頸、骨の浮き出た背中を舌の先でなぞりたい!! 汗の塩辛さと、骨の凸凹に私は涙を流すことでしょう! 貴方の垂らす黒い艶やかな髪は一つに結ばれていて、椿油の良い匂いがします。さあ、恐れないで。その谷間を見せてください。私は母の腹に還りたいのです。貴方の子宮へ、GO.
愛染明王
愛染明王
諦めないで。