古(いにしえ)の頃
いうても、たかだか37、8年前の話ではある。とはいえ、私個人に即するならば遠い昔の話になる。当時高校3年生だった私は、進路について真剣に考える必要があった。埼玉県下でも一、二を争うバカ高校であったとはいえ、就職するか一部の生徒は進学の希望を担任に申請しなければいけなかった。
私はといえば、父親の言でなんとなく大学を目指そうかと考えていたに過ぎない。今では考えられないことだが、なまじあの頃の私は学業が良かった。最終的にはクラスで三番目に落ち着いたものの、成績が良好だという事が父に変に期待させてしまった。
「お前なら、父さんが入れなかった早稲田も夢じゃないかもしれん」
よせばいいのに父のそんなおだてに乗ってしまい、私はすっかり翌年の今頃には大学生として青春を謳歌している気になっていた。そこで勉学に一層励んでいれば話もわかる。しかしどこかで大学受験を甘く見ていた私は、高校受験に毛の生えたものとは訳が違うぞという先生の忠告も聞かず、当時所属していた文芸部の活動に重きを置いていた。
思えばあの頃は、私が極楽トンボでのんびりやってこれた最良の時期だったかもしれない。大学受験の苛酷さを顧みようともせず、とにかく大学に入ったら今以上に小説の執筆に心血を注ぐのだ。一見もっともらしく聞こえて、てんで的外れな努力をしていた。そうは言っても、文芸部の部長としては充実していた。他の後輩部員のことは全く関心を示さず、自分個人の文芸誌を季節毎に配信して意気軒昂としていた。
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カテゴリー: 日記・エッセー
投稿日時: 2024/8/25 1:28
江戸嚴求(ごんぐ)
ノベルアップ+でエッセイなど発表している、五十路の雑文家です。江戸厳愚から江戸嚴求と改名しました。