お題で習作《日常編》  線香花火

「みんなで、花火しませんか?」  夏の終わり、四人で花火をすることになった。彬の提案だ。  彬がディスカウントショップで買ってきたという色とりどりの花火。ゆっくり時間をかけてそれらを楽しんだ僕たちは、程よく心地よい疲れと共に最後の花火に手を伸ばした。 「やっぱり〆は線香花火よねぇ」 「そうですねー」  花火なんか初めてするはずなのに、どこから知識を得てきたのだろうか。ひよりが隣の彬に向かってしたり顔で言うと、彬は易く微笑んで頷いていた。  相変わらず彬はひよりに対しては距離感が近い。複雑な事情はあれどひよりが彬にとって大切な幼なじみであることは僕も理解していた。  だが、あれを見よ! 同性であるという強みを笠に着て、彬といちゃいちゃベタベタするひよりのだらしない顔を! なんてうらやまし……ごほんごほん! その……このままでは彬が危険だ!  僕はぐっと手の中の線香花火を握ると、彬とひよりの間に割って入るように彬に声をかけようとした。 「「彬!」」
小野セージ
小野セージ
ちなみにセージは男性名ではなくハーブの名前のほうです。修行のためにお題を使った短編を不定期に投稿してみようかなと。登場人物はいつものうちの子です。