フレイル=サモン〈CLⅣ〉

フレイル=サモン〈CLⅣ〉
サウラ国領土〈ジェノバ中央都市・ハーブ魔導士の家〉  お使いを任されていたラノスを玄関で見送り、シノはファームに連れられて例の飼育部屋に向かった。部屋はずっと奥の方にあり、木戸を開くと風変わりな景色が二人を待っていた。  壁際には大きな樽がいくつか積み重なっており、それを台座にする空の植木鉢はすっかり埃をかぶっていた。  天井に目を向けると、黒ずんだつる草が蜘蛛の巣を張るように根を絡めているのが分かる。びっしりと頭上を覆うように生育しているその植物からは、丸っこい赤茶色の果実がいくつか垂れていた。どれも成熟しているらしく、ほんのりと甘いフルーティーなその香りが鼻先をくすぐった。  好奇心に息を弾ませながら、シノは思わず尋ねた。 「ねえファーム!あれは何⁉︎」 開け放たれた窓から射す自然光の当たり具合によって、表面は臙脂色に近くなる。ファームはシノにも分かるよう簡単な言葉で説明した。 「シゴハンテンっていう名前の果物だよ。生きてる間はものすごい刺激臭を発するんだけど、死んだ後はそれが反転してフローラルな香りを纏うようになるんだ」 シノは頷く事で納得を示した。
クリオネ
クリオネ
来年度まで活動休止中〜♪ ※注釈※ 時折り過去話に手を加える事があります (大きく変えた場合は報告します) 定期的なご確認をお願いします。 novelee様の不具合か、 長い文章の一部が 途切れている場合があります。