揺れた幻想、写せ幻灯

揺れた幻想、写せ幻灯
 秋、僕らは2人で景色を撮って歩いていた。ほんとは他にすることがあるかもしれないけど、した方がいいことなんていっぱいあるかもしれないけど、僕はこの時間こそが生きるということ。  突如、慣れない冷たさを纏う鋭い風が景色を揺らす。生きている世界を、楽しむような、そんな風。揺れる木々。僕は迷わずシャッターを切る。保存した景色のすみに、空を眺める君がいた。笑顔が綺麗で、見とれるほどに景色と重なり揺れていた。 「残せるものなんてあるか分からないので」  君が言ったその言葉がやけに心に残り、どういう意味なのか、何を思って言ったのか深く悩んでしまう。君は笑って、 「なんでもないよ」
ららのーと
ららのーと
大学1年。初小説2022年9月21日 暗めの話が多い人。