春の雨

少し早く家を出ると、霧雨が降っていた。 一瞬出るか迷ったが、手ぶらもまた良いかと思うことにした。 人はびっくりするほど少ない。 どこぞのお嬢様のような女性が傘を持って歩いていたり、 なるほど計画性の高そうな、どこかピシッと歩く学生がいたり。 同じ道なのにこんなにも違うものかと、気の抜けたようなことを思った。 左に曲がると地面に転がる桜の殻が湿っていて、空気にほのかな甘さと酸っぱさが混じっている。 いつぞやの桜の塩漬けの香りに似ている。 少し踏んでみたが、濡れてしぼんだ殻は特に何も変わらない。 そういえば朝食を何も食べていないと思い出した。
ぽんとりんご
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投稿も内容も不定期です