春の雨
少し早く家を出ると、霧雨が降っていた。
一瞬出るか迷ったが、手ぶらもまた良いかと思うことにした。
人はびっくりするほど少ない。
どこぞのお嬢様のような女性が傘を持って歩いていたり、
なるほど計画性の高そうな、どこかピシッと歩く学生がいたり。
同じ道なのにこんなにも違うものかと、気の抜けたようなことを思った。
左に曲がると地面に転がる桜の殻が湿っていて、空気にほのかな甘さと酸っぱさが混じっている。
いつぞやの桜の塩漬けの香りに似ている。
少し踏んでみたが、濡れてしぼんだ殻は特に何も変わらない。
そういえば朝食を何も食べていないと思い出した。
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カテゴリー: 日記・エッセー
投稿日時: 2024/4/23 12:26
ぽんとりんご
投稿も内容も不定期です