折り織りウオ

折り織りウオ
 原稿用紙にものを書くのがあまり好きではなかった。簡単に消えてはくれない。消しゴムで消しても、書いた跡をどうしても残してしまうから。未完結で、まるで崩れたカタチのポリバルーンのような物語たち。作品とも呼べず、ただ最高傑作の下書きにもなれた原稿用紙たちを、惰性に使ったものたち。  錆びついたクッキーの型を使い回すように、 私は「作風」などという言葉にかまけて、何も生み出せずにいる。それを私の芯の通らない字が体現してしまっている。その字を見て、書き続ける忍耐力が私にはない。「書道、習っているの」と時たまに訊かれる棘が、ちらりと顔を見せる。どれもナァナァでやってきた私の跡。気取らずに言葉を選べなかった、本当につまらないエッセイ。  ねぇ、私ってこんなにつまらないのよ。      そう言える勇気もなく、少しの栄光を掲げてみる。  小説家になるつもりはない。加えて文学の道に進むことも真剣には考えていない。書くことが生きがいかと問われれば、そんなことはない。三食昼寝と、夜の安眠の方が大切だ。友人より、書くことが大切か。それはノーである。一種の暇つぶしのようなものだ。もしくは、誰にも入ってこられない秘密基地のような。  何度もアカウントを変えて、ノベリーに居座り続けている私は、これまでたくさん「書いて、生きていきたい」という人を見た。「小説家になりたい」、「書かないと生きていけない」と、そういう人を。
歩道橋
歩道橋
しがない歩道橋です。通られる際に、眼下の作品を見ていってくだされば、と。