悪魔
悪魔と云う物は美しく着飾り、整った美貌を持ち、硝子玉の様な眼を煌めかせている。水晶の如く澄んだ白い肌、或いは酷く醜い身体をした者も居る。鱗の艶やかな蛇、巨体の魚、赤孔雀や毛の散る針を刺したような棘を持ち、歪んだ顔を傾ける犬。然し、どの悪魔にも知恵があり、神々に逆らった。憤怒した天の神は悪魔を地獄と云う閉鎖空間に閉じ込めて、封をしたのだ。
天使と云う物は醜い物を嫌い、悪魔を穢らわしいと云って蹴り捨てた。彼等は狂人共めと吐き捨てるが、神仏の前で這い蹲り、一つの者を疑いもせず信じて、それを信じぬ悪魔を攻撃するのも狂人と呼べよう。翼の塊に眼玉をこじ付けた様な醜い姿は見るに堪えない。だが、真実を知っていそうな其の眼だけは誠実だと思えた。
悪戯心に全てを捧げた悪魔も、無心に神々を信仰し拝めている天使も、何方も愚かである。想像の中で美しく佇む悪魔は、瑠璃色を纏い清水のような髪を解かして微笑む聖書の天使そのものなのだ。然し、地上の天使と云う物は神々を全知全能に描いたは良いが、悪魔を悪く拡張し醜く描いて、其れを神と信仰していた人々を潰した。気がつけば真実を揉み消して、神すら信じず考える事を辞めた天使で周囲は溢れ返る。私は朧げに考えた。聖書を疑わずして神を拝む勿れと。
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カテゴリー: 日記・エッセー
投稿日時: 2025/8/16 4:19
愛染明王
主にTwitterで行なっている長編創作を書き留めています。表紙は自作ですのでご心配なく!