第三話 届かない声

週末の午後。柚葉は久しぶりに街を歩いていた。 (なんだか、少しだけ外に出る気分になれた……) そんなことを考えていた矢先、見覚えのある姿が目に入った。 ——沙耶の母親だった。 胸がギュッと締めつけられる。 (どうしよう……声をかけるべき? それとも、気づかれないうちに……)
かなたん