花筏 『落花流水・徐』

花筏 『落花流水・徐』
 ブランコに揺られて、菓子パンを頬張る。  それを、甘ったるい缶コーヒーで喉の奥に流し込み、夏の日差しを睨め付けた。  木陰のベンチに目をやると、まるで三十年後の自分みたいな、はち切れんばかりの腹をしたシャツ姿の男が横たわっている。そのせいで、今日は腰を下ろせる場所がココしかなかったのだ。  川井 流水(ともみ)は自意識過剰な男だったので、会社の休憩所も食堂もカフェも、近辺の飲食店さえも、『同僚がいるのではないか?』『自分の陰口を叩き、嘲笑われるのではないか?』と思えてしまい、昼食はもっぱら公園でとっていた。  その劣等感に、確かな根拠は無い。  単に他人が恐ろしいだけだ。  そして、その動向が、結果として周囲の人間に『川井 流水は変わった男だ』という印象を与えてしまっている事を、彼はまだ知らなかった。  川井が退勤するのは、フロアの電気が半分以上消えてからである。
四季人
四季人
活動終了 文藝サークル"NöveSir!!"主宰代行。