長崎一晩旅行記

長崎一晩旅行記
 油蝉の鳴く日、楠が根を張るその土地に足を踏み入れた。太陽は南中に居て、制服を纏った賢そうな学生達が雑談を交わしながら門を入ってゆく。其の白い門には長崎大学熱帯医学研究所と彫られてあった。通り過ぎると、学堂のようなものがあり、ぴたりと紙が貼られて足場周りには緑の池がある。その向こうには西洋医師の顔と名が英字で綴られ、銅像らしきものも飾られている。松の木も涼しげに幹を伸ばしており、如何にも日本らしさと西洋らしさの融合した大学だという印象を受けた。医学部のコンビニエンス・ストアのようなものは少し変わっている。彩豊かなエナジー・ドリンクは味別に並べられており正面にある。店の中央から右手は免疫学、熱帯医学、循環器医学など専門に添った医学書が新刊も欠かさず並べられており、大腸癌についての医学書の新刊が出されたという張り紙もあった。何より、甲虫を高精度で撮った写真集、科学雑誌なんかも並べられており楽しい。何よりそのような教科書達も学生ならば割引があるのでよかった。そこで私はおにぎりを買って食べると、会場まで行った。場は四百人が来ることを予定されている。前列は全て女、私は誰も居ない後列に座った。すると何故だろうか? 男だけが隣に来る。気がつけば私の列は全員男に染まっていた。講義は聴くべきなのでここでは除くものとする。仕方なく説明を受けて、美人な先輩の言うことを頷いて聞いているとあっという間に終わってしまった。そこで質問だけ。ここで受ける人々の考え方を考察することができる。 「私は国境なき医師団を志しております」細身な髪を剃り上げた男が言った。私は興味と彼に対する尊敬心を露わにせざるを得なかった。無論、私もそれを志している。熱帯医学に対する好意がある。 「そのような道を選ぶ先輩らは、一学年の内、どれだけいらっしゃるのでしょう?」そう言った。私のその件に関して回答が気になり、固唾を飲んで返事を待つ。熱帯医学の研究をしている先輩が答えた。 「一学年に一人か〇人でしょう。でも国境なき医師団の為の教諭がいらっしゃいます」 「補足として、アフリカでマラリア研究などする短期留学の教育課程《カリキュラム》もありますので参考になれば幸いです」と助教。それから質問がないかと訊けば、また小柄な男が立ち上がって訊いた。 「私は免疫学に興味があるのですが、アデノウイルスに型が沢山あり、特効薬がないのは何故でしょうか。また急性肝炎との関連は?」 「免疫学専門なのでお答えします。現時点で回答はできません。アデノウイルスに対しては世界的に研究も行われており、原因解明が進められています」助教が笑顔で応える。私はその質問はやや無謀ではと思ったけれど素直に思ったことを質問する勇気は今後の人生で役立つし人生をより良く変えてくれるんじゃあないかと思った。その次は女の子だ。 「一般入試で入学した医学生らは研究医枠のように研究が出来るのでしょうか」 「もちろん、出来ます」と助教。本日は助教が忙しいようだ。そのような質問を繰り返しているうちに締め切られて、ずっと手を挙げていたが当たらなかったらしい隣の方の男は舌打ちする。アンケートに答えてからすぐに会場を出て行った。出たところを資料館側に歩いて行って下ると路面電車があるので、崇福寺方面に乗り込んで帰る。それが困難である。おじさんに揉まれて挟まれて押されてと繰り返し、これ以上増えるかと思えば自分だけになったりと人数の変動が激しい。やっと着いた私の宿泊するところ。そこでシャワーを浴びて友人が来るのを待った。すれ違うのが怖いのだ。それからしばらく待っていると、幾つか路面電車が到着する。まぁいつか来るかーと思ってぼーっとしていたら隣の下らへんに何かいる。明らかに小柄な女が見えたのでまさかと思った。てっきり彼女を大柄な美女だと思い込んでいたようだ。然し、見てみよ。彼女は細く小さな豆鹿のようではないか。更に隣の人は一眼見れば男、聴けば女と云った模様で性が明瞭でない。
愛染明王
愛染明王
དབྱར་རྩྭ་དགུན་འབུが好きっす