クリスマス前のサンタクロース。

クリスマス前のサンタクロース。
 頬を撫でる風が冷たくなってくるこの時期。コスメ好きには堪らない季節だ。何故かって? クリスマスコフレというコスメの宝箱が世間に出回るからだ。  私はスキップしたくなる気持ちを抑えながら、近くの百貨店に向かう。私が狙うブランドの人気は凄まじい。だから正直なところ、売り切れて店舗には在庫がないかもしれない。予約はしたのだ。……したつもりだった。最後のボタンを押せておらず、予約ができていなかったなんて信じたくもない。そのことに気づいた時の私は一体どんな顔をしていただろう。きっと魂が抜けきっていたに違いない。だから今日が勝負なのだ。何としてでもお目当ての品を手に入れてみせる。 「うわっ、もうこんなに……」  百貨店に着いた私が目にしたのは、クリスマスコフレを求める人の長蛇の列だった。私自身もかなり早起きして来たのだが、まだまだ上がいたのか。 「売り切れないといいけど……」  内心ドキドキしながら、列に並ぶ。段々と近づいてくる運命の瞬間に胸が高鳴る。私の前に並ぶお姉さんが無事購入できたのを目にして、私の鼓動は一気に早くなった。遂にこの時が……! そう思った時だった。 「えー、申し訳ありませんが只今の方で最後でごさいます! ご好評いただきましてありがとうございました!」  え? 噓でしょ……? 私の思考が停止する。  最後の購入者であるお姉さんが申し訳なさそうな表情を浮かべて、コフレの入った紙袋を手にしている。いいなぁ、運が良いって羨ましい。……それにしても綺麗な人だな。女の私でさえも見惚れてしまうほどの美人だ。赤黒のリップが似合う凛とした、まさに大人の女性という感じ。腰辺りまで伸びる艶やかな髪は、揺れる度に人を魅了しているようにも感じる。高身長でスタイルも良いため、存在感も抜群だ。この人になら最後の一つを買われてもいいか……と思ってしまうほどである。
おもち
おもち
こちらでの寄り道は如何ですか?🍀🕊 ここに辿り着いてくれた貴方のお気に召すお話があれば幸いです✨ 短編小説サイトPrologueでも投稿しています📚