海月

海月
「僕…………?」 久しぶりに他人の目を覗き込んだ。以前のことを思い出して、人と見つめあったことなんて林田としかないと思い出す。 ただ純粋無垢な好奇心のみで構成された瞳を、僕は未だかつて見たことがなかった。少し色素が薄い髪はとても指通りがよさそうで。幸せそうで苛立った。 「なんで初対面の人間に言わなきゃならないんだ」 「僕神原要!引っ越してきたんだ!お兄ちゃんの名前は?」 まるで会話が成り立たない。己が小学生くらいの頃はどうだっただろうか。ちゃんと成り立たせていただろうか。ちゃんと、人間を装えたか? 「…………須賀翼。本名は違う」 「本名?本名って何?」 「あー…………つまり僕はだな…………偽物なんだ」 嗤える。僕も会話を成り立たせていないではないか。こんな見知らぬ一回り以上下の子供に何を言っているのだろうか。己が偽物だなんて。なぜ僕はこんなに胸が痛いのだろうか。
雪月真冬
雪月真冬
雪月真冬と申します。実を言いますと昔pixivによくお邪魔させていただいていた者です。年齢不詳でお願いします。男子です。フォローしてくれたら嬉しいです。是非フォローしてください! (腐男子です。地雷な方は避けてください)