少年と老人

少年と老人
「なぁ、少年」  学校からの帰り道、ランドセルのまま土手に寝転んだ僕は、視界の外から突然聞こえたしわがれ声に驚き体を起こした。  声の主を探すように振り返ると、荷車を手にした一人の老人が僕の後ろに立っていた。肩くらいまである髪は縮れ、髭は伸びきり、服の襟や袖も伸びてしまっていて、老人はお世辞にも綺麗とは言えないような身なりだった。髪や髭の所々に白が混ざった様子からしておそらく老人で間違いないだろうが、本当のところの年齢はよく分からなかった。  老人は戸惑う僕には目もくれず、ただ上を見上げてこう言った。 「少年はこの空が何色に見えるかい」 何色と言われても、上に広がる初夏の空には雲一つない。  他に何色に見えるのだろうか。わざわざ僕に聞いたからには違う答えがあるのかもしれない。  そう思って考えてみたものの他の答えが一つも思い浮かばなかった僕は、恐る恐る最初に考えた色を答えた。 「えっと……青…………」 僕の答えを聞いた老人は言葉を発することも表情を変えることもなく、たださっきよりもっと上を見上げ静かに息を吐いた。
あまもよい
あまもよい
 真夜中の通知ごめんなさい。