麗しの蝶の君

麗しの蝶の君
 ーねえ知ってる?あそこにいる女の子。 確かに向こう側の校舎に、いた。スラリとした立ち姿に長い黒髪を伸ばして、目を伏せている。逆光も相まってとても儚く見える。顔を上げて彼女は再び歩き出した。驚くほど端正で麗しいという形容詞が似合う顔だった。すうーと滑るように優雅に歩いて校舎の影に消えてしまった。 ーあの子ね、蝶々なんだよ。 そう言われても驚きはなかった。ぼんやりとそうだろうなぁ、そうに違いないと納得させる節があった。 「は?どうゆう事?」 しかしそう思ったのは数ナノ秒程度のことで直ぐ問い返した。 「あの子は蝶なんだよって話。」
倚吏
倚吏
倚吏(より)です よろしくお願いします 受験期を無事終えてゆっくり執筆を再開中。