金木犀さん

僕は金木犀の香りが好きだ。 秋を彷彿とさせるその香りは、僕の『初恋』だった。 小さい頃から、僕は身体が弱かった。 何度も入退院を繰り返し、学校も休みがちだった。 中学生の夏、体調を崩して入院することになった時のこと。 その頃は昔よりは身体も丈夫になってきていて、突然のことだったから酷く落ち込んだ。 また昔みたいに苦しくて孤独な生活をしなきゃいけなくなる気がして。 ベッドの上でため息をこぼす。
一ノ瀬奏
一ノ瀬奏
いちのせ かなで(Ichinose Kanade)と申します。 創作の源泉は教室に響く乾いたチョークの音とどこか遠くから聞こえる先生の声。 そんな贅沢なBGMを拵えて、本来「有意義」と言われるべきだった時間に「無意味」をつらりと重ねること、それが私にとって何よりの至福でございます。 私の奏でる不協和音が退屈極まりない日常に、「ふっ」と鼻を鳴らして笑ってしまう、どこか間の抜けていて、でも確かにそこにある「ズレ」をお届けできれば幸いです。 もっとも、私の旋律が顔も名前も知らない貴方のお耳に馴染むかどうかは保証致しかねますが。