香り、香る

香り、香る
あ、サイダーの香り。ある女の子が横をすり抜けてった。転校初日で廊下を彷徨ってた時だった。弾けるような感覚とほのかな甘さ。喉を通る時炭酸が少し苦しいような。あの子とまた会いたいな。 これ、恋かな。サイダーかな。青く透き通るラムネかな。 ◇ あ。やっちゃったー…。友達と馬鹿騒ぎしてたら手に持ってたサイダーを服にこぼしちゃった。しかも結構な量。ハンカチでとりあえず拭いてみる。 「わ、やべ。ごめん!ぶっかけるつもりは無かったんだけどさ」 急いで薫は自分の上着を私にかけた。ほわっといい匂いが包み込む。お花の香りかな。そういうの女子力無いからわかんないや。でもなんだろ。優しくて暖かくて…安心する。 「シャツ透ける…から早くなんか着替えてこいよ!」 「もう、言わなくてもそうするよ!」 廊下を走って保健室に行く。心臓のドキドキが私の足を速く回転させる。
倚吏
倚吏
倚吏(より)です よろしくお願いします 受験期を無事終えてゆっくり執筆を再開中。