死期のひと夢
もう分かっている。三年も全身に管を通されて、初めはそれなりの普通食だったのが、全てがペースト状の食事にも変わっている。
正直に水すら飲み込むのに力を必要としてしまう。
八十一年の長い様な一瞬の人生だった。誰が言ったのか?「人生は一炊の夢の如くなり」
そう、寝て起きる様に終わってゆくのだ。私の記憶では大好きな母に、沢山甘えて、甘えまくった。本当に大好きだった。
「お母さん?もう少しで久しぶりに甘えに行くよ?」
「私の八十一年に何点をくれるだろうか?頑張ったねといっぱい抱きしめてくれるだろうか?」
段々と昔の記憶しか思い出さなくなって来て、生命維持装置が時おりにピーとちょこちょこと鳴ったりしている。
もうそろそろかな?人生で誰もが一度しか味わえない死期を存分に体感しよう。
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カテゴリー: 恋愛・青春
投稿日時: 2024/7/15 21:13
K and A Style
初老🍷🥂🍻🥃🍸🍹🍺🍶