死期のひと夢

死期のひと夢
もう分かっている。三年も全身に管を通されて、初めはそれなりの普通食だったのが、全てがペースト状の食事にも変わっている。 正直に水すら飲み込むのに力を必要としてしまう。 八十一年の長い様な一瞬の人生だった。誰が言ったのか?「人生は一炊の夢の如くなり」 そう、寝て起きる様に終わってゆくのだ。私の記憶では大好きな母に、沢山甘えて、甘えまくった。本当に大好きだった。 「お母さん?もう少しで久しぶりに甘えに行くよ?」 「私の八十一年に何点をくれるだろうか?頑張ったねといっぱい抱きしめてくれるだろうか?」 段々と昔の記憶しか思い出さなくなって来て、生命維持装置が時おりにピーとちょこちょこと鳴ったりしている。 もうそろそろかな?人生で誰もが一度しか味わえない死期を存分に体感しよう。
K and A  Style
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初老🍷🥂🍻🥃🍸🍹🍺🍶