合作企画 魔法が解ける、その前に。 前日譚 瀬亜side『未来と生きる希望』

合作企画  魔法が解ける、その前に。  前日譚 瀬亜side『未来と生きる希望』
ぽつ、ぽつ、ぽつ。 窓の外から聞こえる雨音が、リズムのない子守のように、静かな保健室を満たしていた。 誰もいない部屋。真っ白な天井が雨に霞んだ空と重なって、まるで世界の色が少し薄くなったみたいだった。 瀬亜はそっと体を起こし、窓の外を見た。苦しさと情けなさで雨に漂れる校庭がどこか滲んで見えた。 「…また、途中で倒れちゃったな…」 苦笑まじりに呟いて、瀬亜は少しだけ息を整えようと深く呼吸をした。冷たい空気が流れ込んできて息を吸おうとするたび咳が止まらなくなった。 今日は体育の授業だった。無理をしないようにって言われていたけど、みんなと同じように走ろうとして、途中で視界が真っ白になった。 「ごめんね、って…言いたいけど…みんな、やさしいから…」 だからこそ、申し訳なさが胸に残った。自分はいつも「大丈夫」と笑うことしかできない。 …だけど、雨の日は、少しだけ楽になる。
叶夢 衣緒。/海月様の猫
叶夢 衣緒。/海月様の猫
自己満です。 少し投稿頻度落ちてます。 ※フォロバ目的のフォローはしません。フォロバも期待できないと思います。 2023年 2月27日start 3月3日初投稿