風の中で待っている
上條恒彦氏が亡くなられた。85歳で老衰であったという。当初この方のイメージは俳優としてであり、地味ながらも存在感のある人だった。元々は歌手であったと知ったのはいつ頃であっただろう。確か小学5、6年生の頃だと思った。音楽の授業で、シューベルトの「魔王」を鑑賞した。そのレコードの歌い手が氏だった。
「お父さん、お父さん、魔王が今、坊やを掴んで連れてゆく〜♪」
上條氏の臨場感ある歌声にたちまち惹き込まれたのを、今でもよく覚えている。思えば、歌手としての彼と接する事の出来た私は幸せだったのかもしれない。役者としてが最初だったか、歌手としてが初めてだったのかいまいち記憶が定かでない。ただ、私の記憶の中では歌い手としてのイメージが強い。
彼の代表曲といえば、「だれかが風の中で」だ。これを主題歌にした「木枯し紋次郎」自体、私は鑑賞していない。しかし、とはいえ、時代劇としてではなく西部劇を模して製作されたというドラマは、当時斬新で爆発的な人気を誇ったことは歌を聴いているだけで想像できる。
ドラマそのものは、主演の中村敦夫の出世作となっただけでなく、故蟹江敬三や故阿藤快など後に個性派俳優として名を成す人たちもゲスト出演していた。正に一時代を築いたテレビドラマだった。
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カテゴリー: 日記・エッセー
投稿日時: 2025/8/13 14:33
江戸嚴求(ごんぐ)
ノベルアップ+でエッセイなど発表している、五十路の雑文家です。江戸厳愚から江戸嚴求と改名しました。