少し甘くて、苦すぎる恋だった。

少し甘くて、苦すぎる恋だった。
午前七時に設定した目覚まし時計がけたたましく叫ぶ。右手で時計を黙らせた俺はまだすっきりとしない頭を持ち上げて欠伸をする。 自らの体温で暖まっている布団を捲ってそろりとベッドから足を出すと、フローリングの床に着地した足裏が凍える。 冬の真っ只中、朝に起きるのが苦痛で仕方がない。叶うなら一日中毛布に包まっていたい。そう思いながらもカーテンを開けて朝日を部屋に取り込むと漸く目が覚める。 俺、夕凪(ゆうなぎ)には好きな女性がいる。 今日はその人──ひまりさんに会う予定があるからと、念入りに顔を洗って髪をセットした。 それからスマートフォンを見ると、通知が一件。 ひまりさんからのおはようの挨拶だった。 自然と頬が緩むのを自覚しながら、おはようございますと返信して財布とスマホを尻ポケットに突っ込んで家を出た。 歩いていると体が暖まったな、ひまりさんも暖かくしてるかな。空が澄み渡っている。喫茶店に着いたらメロンソーダが飲みたい、でもやっぱり格好つけてコーヒーかな。取り留めのない思考を楽しみながら到着したのは最近新しく開いたばかりの喫茶店。
姫宮
姫宮