俺とはなんたるか

俺とはなんたるか
俺とはなんたるか、考える。俺とは、1日3食を欠かさない男だ。なに?そんな人はたくさんいる?ではこれでどうだ。俺とは、毎日欠かさず睡眠を取る男だ。なに?この前ゲームに夢中になって徹夜をしていたではないかだって?細かいことは気にするな。ならばこれでどうだ。俺とは、この学校でカースト中を維持する男だ。これは結構、案外大変なものだ。俺をたらしめる強い要素となるだろう。なに?もっと中身の話をしろだって?中身というのは心意気とか、何をしたいのかとか、よくわからないがアイデンティティとかいう類の話か?  それならば答えてやろう。俺は無数の心を持っている。怒るときもあれば、悲しむときもある。嬉しいときも、無意味に気だるいときもある。そのひとつ一つの場面、瞬間、細胞の先から先までの状態で、それぞれの心が形成される。その集合体が俺だ。  さて、本題に入ろう。率直に言うと、俺は恋をした。まだ経験したことのない状況であり、瞬間であり、細胞の先から先までが熱を持ち、死んでは生まれているのがわかる。その人を前にすると脳が言うことを聞かなくなり、途端にチカラをコントロールされた気分になる。まだ未開発な心だ。これが、恋。  今日、その人に告白をしようと思う。三食食べる俺、応援してくれ。大体ちゃんと寝る俺、応援してくれ。他人の目を気にして、なんとかカーストの真ん中にいる俺、応援してくれ。今までのすべての俺、君たちが必要不可欠なんだ。俺とはなんたるかを、今ここで示さなくてはならない。  一歩一歩、踏みしめる感覚がわかる。足の先まで熱い。逃げ出したくなりそうな、しかし絶対にそうしない意思を感じる。俺は彼女の前に立った。  頑張れ、俺たち。
相満 撲
相満 撲
ソウマンボクと読みます。よろしくお願いします。いいねを貰えると励みになります。