"弾痕と失われた命" 世界がいかにして救世主を必要としたのか。
私の眼前を弾丸が通った。
普通の状況であれば信じられないだろう。というか驚愕から腰を抜かしてしまうかもしれない。しかし、現状は普通とは程遠かった。
通常なら、不幸中の幸いで弾に当たって死ぬことがなかったと喜ぶかもしれないが、私はそうではなかった。私はそもそも弾丸が放たれたことに喜びを覚えたのであった。話すと長くなってしまうので割愛するが、弾丸が放たれていなければ、この無秩序な社会において私は甲羅のない亀も同然だっただろう。暴徒化した民衆にどんな卑劣なことをされたことだろう。しかし、弾丸が放たれたことでそれは回避された。
やはり私は正しかった。あの正義感に満ちた偽善者であれば、躊躇せずに弾を放てるだろうと踏んでいた。どんなに心が黒く染まった奴でも、人間社会で無双する大男でも、この行動はできなかっただろう。だからこそ私は裏をかいた。"紅の弾丸"を"精神の銃"に装填して、ただの自分が大好きな小娘に手渡した。そして大いなる報酬と目的をちらつかせて彼女の正義感を煽った。その結果、この通りになった。状況はわからないが彼女は時間通りに、いや、時間よりも前に"引き金を引いた"。
汚職や襲撃事件の連発により崩壊した政府は、もはや世界の統治など眼中にはなかった。とにかく生き残りたいという意志が見受けられるのみだった。世界平和に命を捧げた公務員たちは、世界を捨てて自らの命を選んだ。その結果、世界の暴徒化はより一層極まり、もはや修復不可能な地点にまで到達してしまったのである。
そこで私は、長年研究していた人間の本質に関する事柄についての論文をまとめ、自分の経営する武器製造会社へと向かった。そうしてそこで社員全員、いや、生き残っていた社員全員と言うべきだろうが、まぁとにかく集まった社員たちに向けてスピーチをした。
内容を要約するとこんな感じになる。
一度無秩序な社会が定着してしまった時、人々は平和な方法では秩序を取り戻せない。それはいつの時代も共通することだった。大量の人死がでるのにも関わらず、腐敗した国を立ち直すために革命をおこなってきた。これこそがこの意見を裏付けている。そして今、私たちが直面している現状こそが、歴史に習う限り革命を必要とする事態なのだと私は考える。しかし、これまでの様な新たな国の統治を目指した革命はもはや意味を持たない。国民は政府を打倒するために暴徒化したわけではないからだ。もっと言うと、国民が団結していたわけではなかったからである。こんな状況で必要なのは、圧倒的な恐怖。第二次大戦でいう原子爆弾である。そこで私は、この会社で開発した"不停止の弾丸"を使うことはできないだろうかと考えた。この弾丸は放たれれば永遠に止まることはなく、加速しながら地球を回り続ける。この恐怖の殺人兵器を駆使すれば、民衆を落ち着かせたのちに、恐怖による支配を主体とした、新たな世界を作ることができると考える。恐怖主義とでも言おうか。これらのことを踏まえて、私はみんなに力を貸してほしい。この方法で共に世界を変えたいのだ。
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文字数: 1910
カテゴリー: その他
投稿日時: 2025/7/9 16:53
最終編集日時: 2025/7/9 16:55
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