太陽が水面に揺れている。
太陽が水面に揺れている。
君の誕生日が迫っている、気がした。記憶は朧げだった。今ではその表情さえ、花が泳いで思い出せない。
想い出がひとつ、またひとつと溶け出していくようだ。それは恐ろしいことの筈なのに、体の芯まで冷えていく感覚が不思議と心地よかった。
そういえば、今日は夏に戻ったかのように暑かった。もう金木犀の香りも枯れ草に紛れる頃なのに。
「もうさ、こんな暑い夏からは逃げ出してしまおうよ」そう言った君の口元だけを思い出している。
そうだ、こんな暑い夏なんて投げ出してしまおうか。そう言いかかった口から泡ぶくが溢れた。
太陽が水面の向こうに消えていく。
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カテゴリー: 恋愛・青春
投稿日時: 2021/10/10 9:14
最終編集日時: 2021/10/16 13:22
夜ヶ咲
ファインダーの向こう側、ずっと君を探している。/140字小説とその下書き
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