読めない手紙

読めない手紙 土方が交番を飛び出して、どのくらい経っただろう。 何もわからずがむしゃらにただ走っていたことに我に返って落ち着いて歩き出す。 (俺は誰を思い出したかったんだろう)はぁとため息をつくと、土方は「何やってんだ…」そう呟いた。 それにしても何も考えずに探してたとはいえ、最終的に前住んでいた古いアパートに戻ってくるなんて…まったくの無自覚だった。 今住んでいるところを契約するのと同時にこのアパートは引き払ったからもう自分のものではない。自分が住んでいた玄関あたりを見るとそこに誰かいる。相手はこちらに気づくと話しかけてきた。 「お前、土方だな?」 聞き覚えのない声だ。落ち着いた声の低い男性の声。
月雫しわす
月雫しわす
創作の世界で色々なBL物語を作っています。 各、キャラクター目線の詞や 小説っぽいものも、書いていきたいです。 普段はイラストを描いています。