『第2回NSS決勝』天国への扉
探検家、昆虫博士、悪友。
死んだおじさんが兼任した役目は多かった。私の息子を連れ回しては、夕暮れ時に帰ってくる。持たせたお弁当は空で、夏に蒸されて返ってくるのだから、私としても幸せになることが多かった。
兄弟のように、仲の良い探検隊だった。
夏になると居間の方から、高くて健気な声と、低く嗄れた声が戯れるのを耳にした。
「さっき林の奥で見たのがコクワガタ。お前みたいに小さくて、負けず嫌いなかっこいい虫だ」
息子は頬を膨らませて反論する。「僕は小さくないよ」
冷えた西瓜に塩を振って、思い切りかじりつく。そして、おじさんはアハハと笑うのだった。
「それでいい、それでいい。お前は立派な子供だ。探検隊にピッタリで、誰よりも冒険が似合う」
私にも受け継がれた細い目で、くしゃりとおじさんは笑う。
その顔がそのまま遺影になったのは、冬のことだった。肺炎を拗らせておじさんは亡くなった。
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カテゴリー: ファンタジー
投稿日時: 2025/9/12 22:39
ot
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