辰
男は唐突にぴくつき、机で赤くなった顔を上げた。 真正面の時計は、長針と短針が今にも抱き合おうとしている。 おっとこんな時間か、と男はつぶやき、やや慌て気味に炬燵から脚を出した。 付けっぱなしにしていたテレビから、期待のこもったオーディエンスの騒めきと、かなり興奮した番組司会者のカウントダウンが聴こえる。 さぁみなさんご一緒にっ、せィのー一〇、九、八、七、 男は足の親指を人差し指に乗ってたりしている。 いかにも忙しない感情が滲み出ていた。 六、五、四、三、二ィ、 一… 近所の寺から一発目の除夜の鐘が鳴る。
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