例えばコーヒーと

「つまり君は、人生とは経験の集約とお考えかな」 「ええ、違うのですか」  そう問いながら私は小さなコーヒーカップを口元に運ぶ。湯気がほわりと眼鏡を曇らせる。これが結構気恥ずかしい。 「違うだなんて。そもそも価値観は人それぞれですし、客観的に見てもなかなか的外れだとは思いませんよ」 「では、貴方は如何お考えで」 「ふむ……。人生とは旅であり砂時計であり時には一冊の本でもある。つまりはそう言うことです」  そう答えながら目の前の人物は湯気を操りつつコーヒーをひと口嗜む。なんとも様になった粋な様子である。 「その心は」 「君はなんだと思いますかな」  恥ずかしながら浅学である私は直ぐに真意を問うてしまう。それを見透かされているが、返された問いは寧ろこの状況を楽しんでいるようだ。
ひるがお
ひるがお
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