価格設定

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朝起きると、僕は百円だった。 日差しがベッドに差していて、汗ばんで寝苦しくなっていた。午前六時十分で、僕にしてみればそれは少し早い時間だったものだから、携帯の目覚ましのスヌーズを切って、二度寝した。 次に目が覚めた時、僕は八十円だった。時計を見ると、七時五十分。いつも乗る電車の、更に一つ遅い電車にも間に合わないので、遅刻することは確定した。どうせ遅刻するのなら、いつもよりゆっくりしっかり身支度をしてから出社しよう。 顔を洗って八十五円。オーブンでトーストを、フライパンで目玉焼きを焼いて九十円。更にバナナも食べて百円。髭を剃り、歯を磨き、髪をセットして百五十円。スーツに着替えて鞄を持ち、革靴を履いたら百九五円。よし、いってきます。これで二百円。 自宅のアパートから最寄り駅に着くまでの路地で、四千五百円の老爺と、千二百円のミニチュアダックスフントを連れた七千百円の主婦と、八千六百円の小学生男児とすれ違った。 通勤電車内は、バーゲンセールと大差ない。席の隅にブランド物が置いてあったりするけれど、それ以外は大抵安売りの規格品だ。みんな顔に皺を作って、手元のデバイスばかり眺めている。僕は、まるでそういう映像が流れているかのような、坦々たる車窓の景色を眺めていた。 「これで何度目の遅刻だ?」 僕の勤め先である商社に着くと、六千円の上司が僕を叱った。 「あのなあ、うちは比較的時間にはルーズな職場だが、これほど遅刻されると、流石に何か言わないわけにはいかないんだよ」 「……はい、本当にすいません」
あいう
あいう
駄文しか書きません。