海の彼方へ

海の彼方へ
 広い海のはるか向こう、あるあたたかい海に一匹のコバンザメがいた。コバンザメは、ふつう、クジラだとかエイだとかの大きな魚のお腹にくっついて移動するのだが、彼は違った。 「僕は、ひとりで泳ぐんだ!」 彼は、ひとりで泳ぐのが好きだった。尾ひれをぐっと動かすと、水の流れができて体がぐいっと前にいく。そうやって泳ぐのも、泳いで泳いで他の魚たちを追い越していくのも楽しかった。彼は、生まれてから一度も、誰かにくっついて泳いだことがなかった。  あるとき、彼がいつものようにひとりでぐんぐん泳いでいると、仲間のコバンザメが彼に話しかけてきた。 「なんだい、君、ひとりじゃないか。君も今からクジラを探しにいくのかい?」 「いやいや、クジラを探しには行かないよ」 「へえ。俺はクジラが一番いいと思うんだけどなぁ。それともサメかい?」 クジラが好きじゃないコバンザメを生まれてこのかた見たことない、という顔で問う。 「サメでもないよ」
ひるがお
ひるがお
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