雨降るる

雨降るる
 原稿に向かうと、やけに手の影が強調される。じめじめした雨の中を、風のように呼吸する。ポツポツ、ザーザー、雨の強弱は左右し、家の壁や窓は打楽器に変わる。太鼓の音、木琴の音、トライアングルのような音。  朝十時の薄暗さの中、二羽の小鳥がピーコラ、ピーピーさえずり、お茶会を始めた。世間話、恋話、何気ないお喋りをしているのだろうか。一羽の陽気な声と、もう一羽の低い声が響いた。  雨の強度は増した。風が窓を揺らす。雨が重くなったみたいだ。しばらく雨の音に耳を澄ませていると、周りの音が、さらさらとした水のマラカスに変わった。時に霧吹きのように一振り、時に波のように激動した。キッチンの蛇口からは、竹のように太い水。動き出した洗濯機の音が、やけに大きく聞こえる。  ドンドン!私は仰天した。恥ずかしくなった雨が、窓を叩いたのだ。雨は生きている。地へ空へ、姿を変えて輪廻を繰り返しているだけで、雨にも寿命があるのだろうか。
時雨雨音
時雨雨音
はじめまして。雨音(あまね)です。 閲覧ありがとうございます。 本日が、素敵な一日になりますように。