本を喰う怪物(序)
夕日が差し込む私立図書館。人が少なくなる閉館間際の静かな空間は、街の喧騒から切り離された別世界へと様変わりする。その雰囲気が味わえる時間が、女子高生の佳苗(かなえ)はとても好きだった。眼鏡をかけた「可憐な文学少女」の言葉がとても似合う彼女。ゆっくりと本を置き、彼女が目を閉じると素敵な物語の余韻をしっかりと噛み締めている瞬間だ。
「今日も良い物語に出会えた」彼女の胸はそんな満足感に溢れ、いつも心を震わせていた。
幸せな時間を終え、ゆっくりと目を開けると佳苗の前の席に自分と同い年くらいの少年が座っていた。いつの間にこの席に来たのかは分からない。開いた本をじっと見つめる彼の様子だが、見た目は中性的な容姿をしており、思わず思春期の佳苗が見惚れてしまう程の閑静な顔つきをしている。
彼女はしばらく目線を外せないままでいたが、閉館のアナウンスが流れると彼女はハッとし、急いでカバンを持ち退席しようとした。すると少年は彼女の方を向いて優しく声をかける。
「君はどこの学校の生徒?いつもこの図書館に来ているね」
「僕と同じで、本が好きなの?」
予想もしない美少年からの声かけに、一瞬で顔を赤らめる佳苗。更に慣れない異性との交流、それが彼女の体温を一気に上げたのだ。
「あ、えっと……如月高校……です」
「む、昔から本を読むのが好きで、だからこの図書館に来てるんです」
恥ずかしそうに何度も髪を触り、手に持っていた本を見ながら話す少女を、少年は頬杖をついて笑顔で聞いている。
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カテゴリー: ミステリー
投稿日時: 2025/1/12 17:07
最終編集日時: 2025/2/9 17:41
猫 夢丸
初めまして、夢丸と申します。小説初心者の二十代半ばの社会人ですが、空いた時間にチクチク見たり書いたり。宜しくお願い致します。