【超短編小説】「猫の毛」

 夜、仕事を終え家に帰る途中、自販機が目に入った。  そういえば今日はコーヒーを飲んでいない。財布を取り出しつつ自販機に近づく。  すると、自販機に貼り紙が貼られていた。 《こころのきれいなひと半額》  そう書かれている。  そんなことどうやって判断するんだ。そう思っていると、自販機に、聴診器を大げさにしたような器具が取り付けられていることに気づいた。  辺りを見回し誰もいないことを確かめて、その器具を自分の胸にそっと当てた。  五秒後、ブー、とでかい音が鳴った。どうやら心がきれいではなかったらしい。  恥ずかしくて俯いた時、その器具に猫の毛がついていることに気づいた。  けっ。
六井 象
六井 象
短いものを書いています