寿楽荘、曰く憑きにつき〈5〉
————これは・・・夢、だろうか? それともいつかの記憶だろうか? 記憶を辿ってみてもそれに纏わる記憶の欠片は拾えなかった。
フィルター越しに見る風景。薄らと靄の掛かった視界。それは段々と鮮明になっていく。
「此処は・・・」
夕暮れ時の公園だ。柳田は見知らぬ公園の前に立っていた。遠くの方からは時刻を告げるチャイムが鳴っている。
人気のないその公園に目を向けると、使われなくなった遊具達が何処か寂しそうで。何とはなしに辺りを見渡してみると、砂場の端に幼い少年が背中を丸めてしゃがみ込んでいるのが見えた。
不規則に肩を揺らし、鼻を啜る音が聞こえる。少年は独りぼっちで泣いているみたいだった。両親とは・・・・・・逸れてしまったのだろうか?
柳田は少年に近付こうと試みるが、見えない壁に阻まれて近付く事は出来そうもない。せめて声を掛けようか。しかし、何故だか声が出せない。
どうしたものかと、ただ遠目から少年を眺めていると、突然、視界が歪み場面が切り替わる。そこもまた、見覚えのない場所で、今度はアパートの一角だった。寿楽荘を思わせる古びたアパート。寿楽荘よりも少し小さいだろうか。そこの二階へと続く階段の所にあの少年が座っているのが見えた。先程よりも少し大きくなっている気がする。
少年は退屈なのか、立ったり座ったりを何度も繰り返していた。黙ってその様子を見ていると、突然少年は何かに気が付いたみたいで、ふと足元に視線を落とす。その何かを少年はじっと観察していた。
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カテゴリー: ホラー
投稿日時: 2022/1/16 12:21
注意: この小説には性的または暴力的な表現が含まれています
華月雪兎-Yuto Hanatsuki-
皆様初めまして。華月雪兎です🐇
「雪」に「兎」と書いて「ゆと」と申します💡
現在は掌編、SS、短編から中編サイズの小説を書かせて頂いております。
恋愛系短編集
『恋愛模様』
ミステリ/ホラー系短編集
『怪奇蒐集録』
をエブリスタ、Noveleeにて不定期連載中📖🖊