お年玉ウォーズ

 私にとってお正月は戦争だ。なぜなら、親族が家に集まるこの時期に、どれだけお年玉をもらえるかが非常に大事になってくるからだ。その金額次第で、買えるオモチャや人形も変わるし、今年一年の過ごし方が決まってしまうと言っても過言ではない。  家の大広間では朝から集まった親戚たちが、宴会を行っていた。皆がお酒で顔を赤らめ、テーブルにたくさん並べられた料理を口にしている。家族のことや仕事の愚痴を楽しそうに話していたが、私にとっては少しも興味がなかった。そろそろお年玉の話題になっても良いはずだ。私はお餅を食べながら、大人たちの一挙手一投足を注意深く見ていた。いよいよ負けられない戦いが始まる。 「そうだ。美香ちゃんにお年玉をあげないとな」  そう言ったのは、テーブルの向かいに座る俊郎おじさんだった。私はその言葉に心と体を臨戦態勢にする。 「あらやだ、毎年悪いわね、俊郎さん」
アズマ
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