賽の河原

賽の河原
 ここは地獄。堕ちてきた者たちは皆一斉に、その賽の河原にて、石の積み上げを行っていた。しかし、変わったことにそれは石では無く、トランプカードだった。皆はそのカードを懸命に積み上げている。やがてそのタワーは完成へと近づき、最後の一段となったところで、やはり近くにいる鬼によって崩されて、また最初から積み直しとなるエンドレスな拷問だった。 「やれやれ、まさかこんなことになるとは……」  トランプを積み上げる一人が言う。 「賽の河原というものは知っていたが、それが石でなく、トランプだとはなあ。石なら、多少の風や手の震えではバランスを崩さないし、それなりにコツを掴めば、うまく積み上げられるんだけど、それがカードとなると、少しのミスであっという間に壊れてしまう。鬼の奴らが手を入れるまでもなく、一段積み上げるのだって大変だ」  二人がそんな会話をしていると、見張りの鬼は、おい、とその愚痴をぶつくさ洩らす彼らに声を上げる。 「余計な話をするんじゃない。さっさと積み上げろ」 「はい、はい、わかってます、わかってますよ」  二人はもはや死んでいて何も怖いものは無くっている身であり、この上なく恐怖心を煽る見張りの鬼の顔にさえ、畏怖するような反応を抱かなくなっていた。  隠して二人は不貞腐れながらも、淡々とトランプタワーをつくり続ける。完成しかけたところで、再び鬼にその塔を崩される。また、やり直し。一人が声を上げた。 「あーあ、もう、やめだ、やめ。こんなことやってられるかよ」
阿部野ケイスケ
阿部野ケイスケ
小説はジャンル問わず好きです。趣味は雑多系の猫好きリリッカー(=・ω・`)