賽の河原
ここは地獄。堕ちてきた者たちは皆一斉に、その賽の河原にて、石の積み上げを行っていた。しかし、変わったことにそれは石では無く、トランプカードだった。皆はそのカードを懸命に積み上げている。やがてそのタワーは完成へと近づき、最後の一段となったところで、やはり近くにいる鬼によって崩されて、また最初から積み直しとなるエンドレスな拷問だった。
「やれやれ、まさかこんなことになるとは……」
トランプを積み上げる一人が言う。
「賽の河原というものは知っていたが、それが石でなく、トランプだとはなあ。石なら、多少の風や手の震えではバランスを崩さないし、それなりにコツを掴めば、うまく積み上げられるんだけど、それがカードとなると、少しのミスであっという間に壊れてしまう。鬼の奴らが手を入れるまでもなく、一段積み上げるのだって大変だ」
二人がそんな会話をしていると、見張りの鬼は、おい、とその愚痴をぶつくさ洩らす彼らに声を上げる。
「余計な話をするんじゃない。さっさと積み上げろ」
「はい、はい、わかってます、わかってますよ」
二人はもはや死んでいて何も怖いものは無くっている身であり、この上なく恐怖心を煽る見張りの鬼の顔にさえ、畏怖するような反応を抱かなくなっていた。
隠して二人は不貞腐れながらも、淡々とトランプタワーをつくり続ける。完成しかけたところで、再び鬼にその塔を崩される。また、やり直し。一人が声を上げた。
「あーあ、もう、やめだ、やめ。こんなことやってられるかよ」
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カテゴリー: その他
投稿日時: 2026/2/25 15:49
阿部野ケイスケ
小説はジャンル問わず好きです。趣味は雑多系の猫好きリリッカー(=・ω・`)