たい焼き
数分前にも見たがもう一度財布の中身を確認してみた。さっきと同じ、計742円の小銭しかなかった。
「ちょうど7で割り切れる…」
なんとなく計算してみた。
タバコを買うと飯が食えない。飯を食うと酒が飲めない。酒を飲むとタバコが吸えない。この三つの欲求を同時に満たすためには金がどうしても必要なことくらいは理解できる。が、その金を得る術がない。アカの他人と共に時間を過ごす能力が著しく自分には欠けているのだ。
他人とのコミュニケーションが幼少の頃から酷く苦手で他人と共に過ごす時間が苦痛でしかない。当然そんなのだから友人もいない。いないというよりいらない。そんなものを作ると苦痛が付きまとうことは学校で教わった。
辛うじて住まわせてもらってる月18,000円のアパートに残っているのは滞納した家賃とほんの僅かの着替えくらいだ。
ここを通るのは何年ぶりだろうか。中学卒業と同時に家を飛び出して以来だから8年以上になるだろうか。
ジイに連れられて買い物に来たスーパーの一角にあった汚いプレハブのたい焼き屋は汚いままで今もたい焼きを焼いている。
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カテゴリー: その他
投稿日時: 2023/1/29 7:53
注意: この小説には性的または暴力的な表現が含まれています
ハヤト