母の故郷へ(続きです

妻が亡くなり一か月が過ぎ、私と息子の二人でどのように生きていくのか母に話し始めた。 私は韓国支社に転勤して祖母と母の妹とその娘がいる仁川の家にお世話なり息子と二人で暮らしていきたいと母に告げた。 しばらく母は私と息子の顔を交互に見つめると、涙を一筋流し、そして頷いた。 息子は母の涙を両眉を少し上げて覗き込むと不思議そうな表情をしていた。 その顔に浮かんだ表情は亡くなった妻が私の心中を推し量るときに浮かべる表情と同じだった。 私がおいでと両手を広げると息子は膝の上にちょこんと座り 母の涙を指差し、ばぁば、泣いてる、ばぁば、泣いてると繰り返し言ったので私は息子の脇腹をくすぐった。 ケラケラと笑い出した息子に泣いてばっかりじゃ楽しくないよなと言って私は微笑んだ。
たかし
本を読むのが好きで自分でも書いてみたら意外と面白いという事でやってます。 伊藤計測「虐殺器官」「ハーモニー」村上龍「コインロッカーベイビーズ」夏目漱石「夢十夜」安倍公房「砂の女」etcが好きなので、そんな雰囲気な物を書きたいです