私は現在に閉じ込められている
私は空中に浮いた画面を見つめる。昔の人はこれをホログラムなんて呼んだらしい。画面には私が日常的に使う機能がいくつかの選択肢として用意され、私はそれらを意識で操作する。こめかみの機械から映し出されたその画面は私を満足させる。
最近思うのだ。未来はどうなるか、過去はどうだったのか。私の思考を読み取ったその機械は私に話しかけてくるがそれには構わない。いややっぱり嘘だ、未来なんてどうでもいい。それは機械が決めることだ。今の私には何の関係もない。それよりは過去の方が気になる。人間が作ってきた歴史だからだ。先ほどから機械がうるさく感じる。確かに私の思考通りのことを言ってくるが、それには全くときめかない。思考が複雑に絡まっている気がする。私が何を言いたいのかもわからない。疲れているのだろうか。私は機械をオフにしてベッドに横になる。
私たちは昔の人がずっと憧れていた物を持っている。圧倒的に進んだ技術、そして自由。ここにいながら何だってできる。何だってできる、のに……
私は過去に憧れているのだ。きっとそうだ。手紙でのやり取り、道路での移動、街中で聴く鳥の鳴き声…… 全てが羨ましい。タイムマシーンの使用が違法でなければ私は絶対過去に行く。人や動物の活気で溢れかえった世界で生きたいのだ。
それから数十分経った頃だろうか、少し気持ちを落ち着かせてから私はこめかみの機械をオンにする。画面には仕事の締め切りを過ぎたとの警告。未来は残酷だ。
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カテゴリー: SF
投稿日時: 2026/6/10 12:46
エーテル (短編・SS)
SF・別世界などちょっと独特な感じのショートショートをメインで書きます。
(全然別ジャンルも書くかも)
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