父親

父親
小さい頃から父親が苦手だった。 今はないが、よく手を出す人だったし、いきなり大きな声で怒り出し物を投げつけたりする人だった。 私はそれが怖くて父が帰ってくる時間の1時間前にどっどっどっと動悸がしていた記憶がある。 食べることが苦手だった私はよく食べ物を残していた。『完食する』事は私にとって宇宙へ行くのと同じくらい難しい事だった。 『ご飯を残す』という事は大人になった今思えば悪いことではない気もするけれど幼少期からそれが身につけばマナーの悪い人間になるかもしれない。父はきっとそういう思いがあったのだろう。すぐ残したがる、食べたがらない私を何時間も叱りつけた。 そして大人になった私は少し劣化して体型も性格も丸くなった父と車で二泊三日の旅行に行っている。 大阪から何時間もかけて車に乗っているのでお尻がビリビリする。けれど車を何時間も運転している父は今日すぐに眠れるのではないのだろうか。
南波
南波
短編(フィクション)を書きます。 フリーランスのモデルしてます。