箱庭の愛
人のことはなかなか分からないというが、実の家族のことをここまで知らないとは思わなかった。いや、むしろ知っていたからこそ衝撃を受けたともいえる。とにかく、一刻も早くこの事態をなんとかしなければならない。
兄貴と二人暮らしをしている。しかし、俺はバイトで昼間はおらず、兄貴は夜勤のためほとんど顔を合わすことはない。だからその日も家に帰って一人だと考えていた。
「おお、びっくりした。今日仕事ないのか」
鍵がかかっていなかったことを、玄関に立ち尽くす兄貴を見て思い出した。兄貴はこちらに背中を向けて一言も喋らない。
再び兄貴に声をかけようとした時、兄貴の手から血が流れていることに気がついた。指先から床へ一滴ずつ垂れていた。
「おい、大丈夫か。どっか怪我でもしたのか」
慌てて兄貴の元へ寄って、そこで兄貴が無言の理由がわかった。
豚がいた。蔑称としての豚じゃない。あのピンク色の、家畜として飼われている、美味しい。とにかく生き物の豚が兄貴の目の前に血だらけで倒れていた。
誰がやったのかなんて聞かなかった。聞くまでもなく、兄貴の腕に付着した血と異様なまでに無言の兄貴が物語っていた。
「これ、なんで」
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カテゴリー: その他
投稿日時: 2025/7/9 13:18
最終編集日時: 2025/7/9 13:19
注意: この小説には性的または暴力的な表現が含まれています
K
色々書いています。