ピアスを開けた日なんて、知らない
__先輩が、ピアスを開けた。
憧れの先輩だった。高校で出会い、別々の大学に進学したため長らく会っていなかった。そんな先輩を駅のホームで見かけたのだ。普段思い出すことのない高校時代の、先輩との記憶が一気に呼び起こされ、どっと胸が高鳴る。記憶の中の先輩が、僕のことを後輩くん、と呼ぶ。話しかけたら、彼女はまた呼んでくれるだろうか。
「せ……」
先輩、と呼ぼうとした言葉が途中で行き場をなくす。驚いたのだ。彼女の肩より少し長い髪を風がふわりと持ち上げ、耳元で先輩との隔たりがきらりと光ったから。
「あ、後輩くん」
立ち尽くす僕を先輩が見つけて軽く手を振る。振り返そうかと、半端に持ち上げた手をリュックの肩紐に添える。
「先輩、お久しぶりです。ピアス……開けたんですね」
「そうなのー。いいでしょう? 後輩くんは元気だった?」
「はい、先輩は……?」
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カテゴリー: その他
投稿日時: 2025/2/26 8:25
ひるがお
見つけてくれてありがとうございます。