「綻び」 〜後日譚 上〜

明良と楓がバディを組んでから、十年。 「楓~!…ごめん、待った?」 息を荒げながら走ってきたのは、女のバディであり神代家嫡男の神代明良。楓と呼ばれていたのは悪魔の子と言われる香久山だろう。 「ちょっとだけね」 女は眉根に少し皺を寄せながら無愛想に答えている。 「まあまあ。仕事ちゃんと頑張るから許してくれよな!」 間抜けな会話をしつつ、肩を並べて歩いていく。行き先は、『ゲート』と言われる外への扉。一人前になった魔道士だけが立ち入ることを許されている。外というのは町を囲う壁の外の事だ。壁の外にも街はあるが、そこには黒魔道士たちが住んでいる。楓や明良含む魔道士たちの仕事は、その黒魔道士たちを壁の中に入れないよう警備すること。警備は、魔道士たちがローテーションで行っている。壁の周囲に等間隔に配備されているのだ。黒魔道士と苦戦するようなら、アラートを鳴らして増援を呼ぶ事もできる。 さて、会話をしなからも彼らは歩みを緩めなかったようだ。ゲートの眼の前まで来ている。男は少し緊張したような面持ちで、女はホッとしたような表情で、ゲートを抜けていくのが見えた。 「来るぞ!」 俺は周囲の数人に小声で指示を送った。俺の魔法の応用で、壁の中を覗き見ていたのだ。
あい
色んなジャンルに挑戦したいです!温かい目で見守って下さい…。